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父: 千尋。千尋、もうすぐだよ。 母: やっぱり田舎ねー。買い物は隣町に行くしかなさそうね。 父: 住んで都にするしかないさ。 ほら、あれが小学校だよ。千尋、新しい学校だよ。 母: 結構きれいな学校じゃない。 "しぶしぶ起きあがってあかんべをする千尋。" 千尋 前の方がいいもん。 …あっ、あああ!!おかあさん、お花しおれてっちゃった! 母: あなた、ずーっと握りしめてるんだもの。おうちについたら水切りすれば大丈夫よ。 千尋 初めてもらった花束が、お別れの花束なんて悲しい…… 母: あら。この前のお誕生日にバラの花をもらったじゃない? 千尋 一本ね、一本じゃ花束って言えないわ。 母: カードが落ちたわ。 窓開けるわよ。もうしゃんとしてちょうだい!今日は忙しいんだから。 父: あれ?道を間違えたかな?おかしいな…… 母: あそこじゃない?ほら。 父: ん? 母: あの隅の青い家でしょ? 父: あれだ。一本下の道を来ちゃったんだな。……このまま行っていけるのかな。 母: やめてよ、そうやっていつも迷っちゃうんだから。 父: ちょっとだけ、ねっ。 千尋 あのうちみたいの何? 母: 石のほこら。神様のおうちよ 父: おとうさん、大丈夫? 父: まかせとけ、この車は四駆だぞ! 千尋 うぁっ― 母: 千尋、座ってなさい。 千尋 あっ、うわっ……わっ、わっ!! ぅああああああっ! 母: あなた、いいかげんにして! 父: 行き止まりだ! 母: なあに?この建物。 父: 門みたいだね。 母: あなた、もどりましょう、あなた。 千尋?…もぅ。 父: 何だ、モルタル製か。結構新しい建物だよ。 千尋 ……風を吸込んでる…… 母: なぁに? 父: ちょっと行ってみない?むこうへ抜けられるんだ。 千尋 ここいやだ。戻ろうおとうさん! 父: なーんだ。恐がりだな千尋は。ねっ、ちょっとだけ。 母: 引越センターのトラックが来ちゃうわよ。 父: 平気だよ、カギは渡してあるし、全部やってくれるんだろ? 母: そりゃそうだけど…… 千尋 いやだ、わたし行かないよ! 戻ろうよ、おとうさん! 父: おいで、平気だよ。 千尋 わたし行かない!! うぅ……あぁっ! 母: 千尋は車の中で待ってなさい。 千尋 ぅぅ……おかあさーん! まってぇーっ! 父: 足下気をつけな。 母: 千尋、そんなにくっつかないで。歩きにくいわ。 千尋 ここどこ? 母: あっ。ほら聞こえる。 千尋 ……電車の音! 母: 案外 駅が近いのかもしれないね。 父: いこう、すぐわかるさ。 千尋 こんなとこに家がある…… 父: やっぱり間違いないな。テーマパークの残骸だよ、これ。 90年頃にあっちこっちでたくさん計画されてさ。バブルがはじけてみんな潰れちゃったんだ。これもその1つだよ、きっと。 千尋 えぇーっ、まだいくの!?おとうさん、もう帰ろうよぅ! ねぇーーーっ!! 千尋 おかあさん、あの建物うなってるよ。 母: 風鳴りでしょ。気持ちいいとこねー、車の中のサンドイッチ持ってくれば良かった。 父: 川を作ろうとしたんだねー。 ん?なんか匂わない? 母: え? 父: ほら、うまそうな匂いがする。 母: あら、ほんとね。 父: 案外まだやってるのかもしれないよ、ここ。 母: 千尋、はやくしなさい。 千尋 まーってー! 父: ふん、ふん……こっちだ。 母: あきれた。これ全部 食べ物屋よ。 千尋 誰もいないねー。 父: ん?あそこだ! おーい、おーい。 はぁー。うん、わぁ。 こっちこっち。 母: わぁー、すごいわねー。 父: すみませーん、どなたかいませんかー? 母: 千尋もおいで、おいしそうよ。 父: すいませーん!! 母: いいわよ、そのうち来たらお金払えばいいんだから。 父: そうだな。そっちにいいやつが…… 母: これなんていう鳥かしら。……おいしい!千尋、すっごくおいしいよ! 千尋: いらない!ねぇ帰ろ、お店の人に怒られるよ。 父: 大丈夫、お父さんがついてるんだから。カードも財布も持ってるし。 母: 千尋も食べな。骨まで柔らかいよ。 父: 辛子。 母: ありがと。 千尋: おかぁさん、おとぅさん!! "諦めて歩き出す千尋。油屋の建物を見つける。" 千尋: へんなの。 千尋: 電車だ!……? ハク: ……!! ここへ来てははいけない!!すぐ戻れ! 千尋: えっ? ハク: じきに夜になる!その前に早く戻れ! …もう明かりが入った、急いで!私が時間を稼ぐ、川の向こうへ走れ!! 千尋: なによあいつ…… "明かりが入ると同時に、たくさんの影が動き出す。" 千尋: ………!!おとうさーん! おとうさん帰ろ、帰ろう、おとうさーん!! "座っていた豚が振り向く。" 千尋: ひぃぃ……っ "豚がたたかれて倒れる。" 豚 ブギィィィ!! 千尋: ぅわぁあーっ! おとおさーん、おかあさーん!! おかあさーん、ひっ! ぎゃああーーっ!! 千尋: ひゃっ!…水だ! うそ……夢だ、夢だ!さめろさめろ、さめろ! さめてぇ……っ…… これはゆめだ、ゆめだ。みんな消えろ、消えろ。きえろ。 あっ……ぁあっ、透けてる!ぁ……夢だ、絶対夢だ! "船が接岸し、春日さまが出てくる。" 千尋: ひっ……ひっ、ぎゃあああーーっ!! "千尋を捜すハク。暗闇にいる千尋を見つけて肩を抱く。" 千尋: っっっ!!! ハク: 怖がるな。私はそなたの味方だ。 千尋: いやっ、やっ!やっっ!! ハク: 口を開けて、これを早く。この世界のものを食べないとそなたは消えてしまう。 千尋: いやっ!!……っ!? ハク: 大丈夫、食べても豚にはならない。噛んで飲みなさい。 千尋: ……ん……んぅ……んー……っ ハク: もう大丈夫。触ってごらん。 千尋: さわれる…… ハク: ね?さ、おいで。 千尋: おとうさんとおかあさんは?どこ?豚なんかになってないよね!? ハク: 今は無理だけど必ず会えるよ。……! 静かに!! "ハクが千尋を壁に押しつけると、上空を湯バードが飛んでいく。" ハク: そなたを捜しているのだ。時間がない、走ろう! 千尋: ぁっ……立てない、どうしよう!力が入んない…… ハク: 落ち着いて、深く息を吸ってごらん……そなたの内なる風と水の名において……解き放て…… 立って! 千尋: あっ、うわっ! "走り出す二人。" ハク: ……橋を渡る間、息をしてはいけないよ。 ちょっとでも吸ったり吐いたりすると、術が解けて店の者に気づかれてしまう。 千尋: こわい…… ハク: 心を鎮めて。 従業員: いらっしゃいませ、お早いお着きで。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。 ハク: 所用からの戻りだ。 従業員: へい、お戻りくださいませ。 ハク: 深く吸って…止めて。 "カオナシが千尋を見送る。" 湯女: いらっしゃい、お待ちしてましたよ。 ハク: しっかり、もう少し。 青蛙: ハク様ぁー。何処へ行っておったー? 千尋: ……!ぶはぁっ 青蛙: ひっ、人か? ハク: ……!走れ! 青蛙: ……ん?え、え? "青蛙に術をかけて逃げるハク。" 従業員: ハク様、ハク様!ええい匂わぬか、人が入り込んだぞ!臭いぞ、臭いぞ! ハク: 勘づかれたな…… 千尋: ごめん、私 息しちゃった…… ハク: いや、千尋はよく頑張った。これからどうするか離すからよくお聞き。ここにいては必ず見つかる。 私が行って誤魔化すから、そのすきに千尋はここを抜け出して…… 千尋: いや!行かないで、ここにいて、お願い! ハク: この世界で生き延びるためにはそうするしかないんだ。ご両親を助けるためにも。 千尋: やっぱり豚になったの夢じゃないんだ…… ハク: じっとして…… 騒ぎが収まったら、裏のくぐり戸から出られる。外の階段を一番下まで下りるんだ。そこにボイラー室の入口がある。火を焚くところだ。 中に釜爺という人がいるから、釜爺に会うんだ。 千尋: 釜爺? ハク: その人にここで働きたいと頼むんだ。断られても、粘るんだよ。 ここでは仕事を持たない者は、湯婆婆に動物にされてしまう。 千尋: 湯婆婆…って? ハク: 会えばすぐに分かる。ここを支配している魔女だ。嫌だとか、帰りたいとか言わせるように仕向けてくるけど、働きたいとだけ言うんだ。辛くても、耐えて機会を待つんだよ。そうすれば、湯婆婆には手は出せない。 千尋: うん…… 従業員: ハク様ぁー、ハク様ー、どちらにおいでですかー? ハク: いかなきゃ。忘れないで、私は千尋の味方だからね。 千尋: どうして私の名を知ってるの? ハク: そなたの小さいときから知っている。私の名は――ハクだ。 ハク: ハクはここにいるぞ。 従業員: ハク様、湯婆婆さまが…… ハク: 分かっている。そのことで外へ出ていた。 "階段へ向う千尋。恐る恐る踏み出し、一段滑り落ちる。" 千尋: ぃやっ! はっ、はぁっ…… "もう一段踏み出すと階段が壊れ、はずみで走り出す。" 千尋: わ…っいやああああーーーーっ!やあぁああああああー!! "なんとか下まで降り、そろそろとボイラー室へむかう。" "ボイラー室で釜爺をみて後ずさりし、熱い釜に触ってしまう。" 千尋: あつっ…! "カンカンカンカン(ハンマーの音)" 千尋: あの……。すみません。 あ、あのー……あの、釜爺さんですか? 釜爺: ん?……ん、んんーー?? 千尋: ……あの、ハクという人に言われてきました。ここで働かせてください! "リンリン(呼び鈴の音)" 釜爺: ええい、こんなに一度に…… チビども、仕事だー! "カンカンカンカンカンカン" 釜爺: わしゃあ、釜爺だ。風呂釜にこき使われとるじじいだ。 チビども、はやくせんか! 千尋: あの、ここで働かせてください! 釜爺: ええい、手は足りとる。そこら中ススだらけだからな。いくらでも代わりはおるわい。 千尋: あっ、ごめんなさい。 あっ、ちょっと待って。 釜爺: じゃまじゃま! 千尋: ……あっ。 "重さで潰れたススワタリの石炭を持ち上げる千尋。ススワタリは逃げ帰ってゆく。" 千尋: あっ、どうするのこれ? ここにおいといていいの? 釜爺: 手ぇ出すならしまいまでやれ! 千尋: えっ?…… "石炭を釜に運ぶと、ススワタリみんなが潰れた真似をしだす。" "カンカンカンカン" 釜爺: こらあー、チビどもー!ただのススにもどりてぇのか!? あんたも気まぐれに手ぇ出して、人の仕事を取っちゃならね。働かなきゃな、こいつらの魔法は消えちまうんだ。 ここにあんたの仕事はねぇ、他を当たってくれ。 ……なんだおまえたち、文句があるのか?仕事しろ仕事!! リン: メシだよー。なぁんだまたケンカしてんのー? よしなさいよもうー。うつわは?ちゃんと出しといてって言ってるのに。 釜爺: おお……メシだー、休憩ー! リン: うわ!? 人間がいちゃ!…やばいよ、さっき上で大騒ぎしてたんだよ!? 釜爺: わしの……孫だ。 リン: まごォ?! 釜爺: 働きたいと言うんだが、ここは手が足りとる。おめぇ、湯婆婆ンとこへ連れてってくれねえか?後は自分でやるだろ。 リン: やなこった!あたいが殺されちまうよ! 釜爺: これでどうだ?イモリの黒焼き。上物だぞ。 どのみち働くには湯婆婆と契約せにゃならん。自分で行って、運を試しな。 リン: ……チェッ!そこの子、ついて来な! 千尋: あっ。 リン: …あんたネェ、はいとかお世話になりますとか言えないの!? 千尋: あっ、はいっ。 リン: どんくさいね。はやくおいで。 靴なんか持ってどうすんのさ、靴下も! 千尋: はいっ。 リン: あんた。釜爺にお礼言ったの?世話になったんだろ? 千尋: あっ、うっ!……ありがとうございました。 釜爺: グッドラック! リン: 湯婆婆は建物のてっぺんのその奥にいるんだ。 早くしろよォ。 千尋: あっ。 リン: 鼻がなくなるよ。 千尋: っ… リン: もう一回乗り継ぐからね。 千尋: はい。 リン: いくよ。 ……い、いらっしゃいませ。 お客さま、このエレベーターは上へは参りません。他をお探し下さい。 千尋: ついてくるよ。 リン: きょろきょろすんじゃないよ。 蛙男 到着でございます。 右手のお座敷でございます。 ?……リン。 リン: はーい。(ドン!) 千尋: ぅわっ! 蛙男 なんか匂わぬか?人間だ、おまえ人間くさいぞ。 リン: そーですかぁー?? 蛙男 匂う匂う、うまそうな匂いだ。おまえなんか隠しておるな?正直に申せ! リン: この匂いでしょ。 蛙男 黒焼き!……くれぇーっ! リン: やなこった。お姉さま方に頼まれてんだよ。 蛙男 頼む、ちょっとだけ、せめて足一本! リン: 上へ行くお客さまー。レバーをお引き下さーい。 "『二天』につくが、『天』まで千尋を連れて行くおしらさま。" "奥のドアを開けようとする千尋。" 湯婆婆: ……ノックもしないのかい!? 千尋: やっ!? 湯婆婆: ま、みっともない娘が来たもんだね。 さぁ、おいで。……おいでーな~。 千尋: わっ!わ……っ!! いったぁ~…… "頭が寄ってくる。" 千尋: ひっ、うわぁ、わあっ……わっ! 湯婆婆: うるさいね、静かにしておくれ。 千尋: あのー……ここで働かせてください! "魔法で口チャックされる千尋。" 湯婆婆: 馬鹿なおしゃべりはやめとくれ。そんなひょろひょろに何が出来るのさ。 ここはね、人間の来るところじゃないんだ。八百万の神様達が疲れをいやしに来るお湯屋なんだよ。 それなのにおまえの親はなんだい?お客さまの食べ物を豚のように食い散らして。当然の報いさ。 おまえも元の世界には戻れないよ。 ……子豚にしてやろう。ぇえ?石炭、という手もあるね。 へへへへへっ、震えているね。……でもまあ、良くここまでやってきたよ。誰かが親切に世話を焼いたんだね。 誉めてやらなきゃ。誰だい、それは?教えておくれな…… 千尋: ……あっ。ここで働かせてください! 湯婆婆: まァだそれを言うのかい! 千尋: ここで働きたいんです! 湯婆婆: だァーーーまァーーーれェーーー!!! 湯婆婆: なんであたしがおまえを雇わなきゃならないんだい!?見るからにグズで!甘ったれで!泣き虫で!頭の悪い小娘に、仕事なんかあるもんかね! お断りだね。これ以上穀潰しを増やしてどうしようっていうんだい! それとも……一番つらーーいきつーーい仕事を死ぬまでやらせてやろうかぁ……? 湯婆婆: ……ハッ!? 坊: あーーーーん、あーーん、ああああーーー 湯婆婆: やめなさいどうしたの坊や、今すぐ行くからいい子でいなさいね……まだいたのかい、さっさと出て行きな! 千尋: ここで働きたいんです! 湯婆婆: 大きな声を出すんじゃない……うっ!あー、ちょっと待ちなさい、ね、ねぇ~。いい子だから、ほぉらほら~。 千尋: 働かせてください!! 湯婆婆: わかったから静かにしておくれ! おおぉお~よ~しよし~…… "紙とペンが千尋の方へ飛んでくる。" 湯婆婆: 契約書だよ。そこに名前を書きな。働かせてやる。その代わり嫌だとか、帰りたいとか言ったらすぐ子豚にしてやるからね。 千尋: あの、名前ってここですか? 湯婆婆: そうだよもぅぐずぐずしないでさっさと書きな! まったく……つまらない誓いをたてちまったもんだよ。働きたい者には仕事をやるだなんて…… 書いたかい? 千尋: はい……あっ。 湯婆婆: フン。千尋というのかい? 千尋: はい。 湯婆婆: 贅沢な名だねぇ。 今からおまえの名前は千だ。いいかい、千だよ。分かったら返事をするんだ、千!! 千: は、はいっ! ハク: お呼びですか。 湯婆婆: 今日からその子が働くよ。世話をしな。 ハク: はい。……名はなんという? 千: え?ち、…ぁ、千です。 ハク: では千、来なさい。 千: ハク。あの…… ハク: 無駄口をきくな。私のことは、ハク様と呼べ。 千: ……っ 父役: いくら湯婆婆さまのおっしゃりでも、それは…… 兄役 人間は困ります。 ハク: 既に契約されたのだ。 父役: なんと…… 千: よろしくお願いします。 湯女: あたしらのとこには寄こさないどくれ。 湯女: 人臭くてかなわんわい。 ハク: ここの物を三日も食べれば匂いは消えよう。それで使い物にならなければ、焼こうが煮ようが好きにするがいい。 仕事に戻れ!リンは何処だ。 リン: えぇーっ、あたいに押しつけんのかよぅ。 ハク: 手下をほしがっていたな。 父役: そうそう、リンが適役だぞ。 リン: えーっ。 ハク: 千、行け。 千: はいっ。 リン: やってらんねぇよ!埋め合わせはしてもらうからね! 兄役 はよいけ。 リン: フン!……来いよ。 リン: ……おまえ、うまくやったなぁ! 千: えっ? リン: おまえトロイからさ、心配してたんだ。油断するなよ、わかんないことはおれに聞け。な? 千: うん。 リン: ……ん?どうした? 千: 足がふらふらするの。 リン: ここがおれたちの部屋だよ。食って寝りゃ元気になるさ。 前掛け。自分で洗うんだよ。…袴。チビだからなぁ……。でかいな。 千: リンさん、あの…… リン: なに? 千: ここにハクっていうひと二人いるの? リン: 二人ぃ?あんなの二人もいたらたまんないよ。……だめか。 あいつは湯婆婆の手先だから気をつけな。 千: ……んっ……ん…… リン: ……おかしいな…あああ、あったあった。ん? おい、どうしたんだよ?しっかりしろよぅ。 女 うるさいなー。なんだよリン? リン: 気持ち悪いんだって。新入りだよ。 "湯婆婆が鳥になって飛んでいく。見送るハク。" "寝ている千のもとへ、ハクが忍んでくる。" ハク: 橋の所へおいで。お父: さんとお母: さんに会わせてあげる。 "部屋を抜け出す千。" 千: 靴がない。 ……あ。ありがとう。 "ススワタリに手を振る千。" "橋の上でカオナシに会う。" ハク: おいで。 "花の間を通り畜舎へ。" 千: ……おとうさんおかあさん、私よ!……せ、千よ!おかあさん、おとうさん! 病気かな、ケガしてる? ハク: いや。おなかが一杯で寝ているんだよ。人間だったことは今は忘れている。 千: うっ……くっ……おとうさんおかあさん、きっと助けてあげるから、あんまり太っちゃだめだよ、食べられちゃうからね!! "垣根の下でうずくまる千。ハクが服を渡す。" ハク: これは隠しておきな。 千: あっ!……捨てられたかと思ってた。 ハク: 帰るときにいるだろう? 千: これ、お別れにもらったカード。ちひろ?……千尋って……私の名だわ! ハク: 湯婆婆は相手の名を奪って支配するんだ。いつもは千でいて、本当の名前はしっかり隠しておくんだよ。 千: 私、もう取られかけてた。千になりかけてたもん。 ハク: 名を奪われると、帰り道が分からなくなるんだよ。私はどうしても思い出せないんだ。 千: ハクの本当の名前? ハク: でも不思議だね。千尋のことは覚えていた。 お食べ、ご飯を食べてなかったろ? 千: 食べたくない…… ハク: 千尋の元気が出るように呪い(まじない)をかけて作ったんだ。お食べ。 千: ……ん……ん、んっ………うわぁああーー、わぁああーーー、あぁああーーん…… ハク: つらかったろう。さ、お食べ。 千: ひっく……うぁあーーん…… ハク: 一人で戻れるね? 千: うん。ハクありがとう、私がんばるね。 ハク: うん。 "帰り際、空に昇る白い竜を見つける。" 千: わぁっ。 "釜爺が水を飲みに起き、寝ている千を見つける。座布団を掛けてやる" "湯婆婆が戻ってくる。" リン: どこ行ってたんだよ。心配してたんだぞ。 千: ごめんなさい。 "名札を掛けるのに手間取る千。" 湯女: じゃまだねぇ。 リン: 千、もっと力はいんないの? 兄役 リンと千、今日から大湯番だ。 リン: えぇーっ、あれは蛙の仕事だろ! 兄役 上役の命令だ。骨身を惜しむなよ。 "水を捨てに来る千。外に立っているカオナシを見つける。" 千: あの、そこ濡れませんか? リン: 千、早くしろよ! 千: はーーい。……ここ、開けときますね。 湯女: リン、大湯だって? リン: ほっとけ! リン: ひでぇ、ずーっと洗ってないぞ。 "転ぶ千。" 千: うわっ!……あーっ。 リン: ここの風呂はさ、汚しのお客専門なんだよ。うー、こびりついてて取れやしねえ。 兄役 リン、千。一番客が来ちまうぞ。 リン: はーーい今すぐ!チッ、下いびりしやがって。 一回 薬湯入れなきゃダメだ。千、番台行って札もらってきな。 千: 札?……うわっ! リン: 薬湯の札だよ! 千: はぁーい。……リンさん、番台ってなに? 湯婆婆: ん?…なんだろうね。なんか来たね。 雨に紛れてろくでもないものが紛れ込んだかな? "街を進んでくるオクサレさま。" 番台蛙: そんなもったいないことが出来るか!……おはようございます!良くお休みになられましたか! 湯女: 春日様。 番台蛙: はい、硫黄の上!……いつまでいたって同じだ、戻れ戻れ!手でこすればいいんだ! おはようございます!……手を使え手を! 千: でも、あの、薬湯じゃないとダメだそうです。 番台蛙: わからんやつだな……あっ、ヨモギ湯ですね。どーぞごゆっくり…… 千: あっ…… "背後にカオナシを見つけて会釈する千。" 番台蛙: んん? "リリリリリ" 番台蛙: はい番台です!…あっ、……うわっ!? 千: あっ!ありがとうございます!! 番台蛙: あー、違う!こら待て、おい! 湯婆婆: どしたんだい!? 番台蛙: い、いえ、なんでもありません。 湯婆婆: なにか入り込んでるよ。 番台蛙: 人間ですか。 湯婆婆: それを調べるんだ。今日はハクがいないからね。 リン: へぇーずいぶんいいのくれたじゃん。 これがさ、釜爺のとこへ行くんだ。混んでないからすぐ来るよきっと。 これを引けばお湯が出る。やってみな。 千: うわっ!…… リン: 千てほんとドジなー。 千: うわ、すごい色…… リン: こいつにはさ、ミミズの干物が入ってんだ。こんだけ濁ってりゃこすらなくても同じだな。 いっぱいになったらもう一回引きな、止まるから。もう放して大丈夫だよ。おれ朝飯取ってくんな! 千: はぁーい。……あっ。 "カオナシを見つける。風呂の縁から落ちる千。" 千: うわっ!……いったぃ…った…… あの、お風呂まだなんです。 わ…こんなにたくさん…… えっ、私にくれるの? カオナシ: あ、あ、…… 千: あの……それ、そんなにいらない。 カオナシ: あ、… 千: だめよ。ひとつでいいの。 カオナシ: あ…… 千: え…あっ! "釜から水があふれる。" 千: うわぁっ!! 父役: 奥様! 湯婆婆: クサレ神だって!? 父役: それも特大のオクサレさまです! 従業員: まっすぐ橋へ向かってきます! 従業員達 お帰り下さい、お帰り下さい! 青蛙: お帰り下さい、お引き取り下さい、お帰り下さい! うっ……くっさいぃ~…! 湯婆婆: ぅう~ん…おかしいね。クサレ神なんかの気配じゃなかったんだが…… 来ちまったものは仕方がない。お迎えしな! こうなったら出来るだけはやく引き取ってもらうしかないよ! 兄役 リンと千、湯婆婆様がお呼びだ。 千: あ、はいっ! 湯婆婆: いいかい、おまえの初仕事だ。これから来るお客を大湯で世話するんだよ。 千: ……あの~…… 湯婆婆: 四の五の言うと、石炭にしちまうよ。わかったね! 父役: み、見えました……ウッ… 湯婆婆・千: ウゥッ……!! 湯婆婆: …おやめ!お客さんに失礼だよ! が・が・……ヨク オコシクダしゃいマシタ…… え?あ オカネ……千!千!早くお受け取りな! 千: は、はいっ! (ベチャッ) 千: うゥ…! 湯婆婆: ナニ してるんだい…!ハヤク ご案内しな! 千: ど どうぞ …… リン: セーーーン! うぇっ……くっせえ…あっ、メシが! 湯婆婆: 窓をお開け!全部だよ!! "大湯に飛び込み、千に何かを促すオクサレさま。" 千: えっ?ぁ、……ちょっと待って! "上から見ている湯婆婆と父: 役。" 湯婆婆: フフフフ、汚いね。 父役: 笑い事ではありません。 湯婆婆: あの子どうするかね。 ……ほぉ、足し湯をする気だよ。 父役: あぁああ、汚い手で壁に触りおって! 千: あっ……あっ! "札を下げようとして落とす千。他の札を取って釜爺に送る。" 湯婆婆: んん?千に新しい札あげたのかい? 父役: まさかそんなもったいない…… 千: わっ! "湯の紐を引きながら落ちる千。ヘドロにはまる。" 父役: あああーっ、あんな高価な薬湯を! "オクサレさまに引っ張り出される千。何かに手を触れる" 千: ……?あっ? リン: セーーーン!千どこだ!! 千: リンさん! リン: だいじょぶかあ!釜爺にありったけのお湯出すように頼んできた!最高の薬湯おごってくれるって! 千: ありがとう!あの、ここにトゲみたいのが刺さってるの! リン: トゲーー?? 千: 深くて取れないの! 湯婆婆: トゲ?トゲだって?……ううーん…… 下に人数を集めな! 父役: えぇっ? 湯婆婆: 急ぎな! 千とリン、そのお方はオクサレ神ではないぞ! このロープをお使い! 千: はいっ! リン: しっかり持ってな! 千: はいっ! 湯婆婆: ぐずぐずするんじゃないよ!女も力を合わせるんだ! 千: 結びました! 湯婆婆: んーーー湯屋一同、心をこめて!!エイヤーーーーソーーーーレーーーー 一同 そーーーれ、そーーーーれ! そーーーれ、そーーーーれ! 千: 自転車? 湯婆婆: やはり!さぁ、きばるんだよ! "オクサレさまからたくさんのゴミが出てくる。" 河の主 はァーーー…… 千: うっわっ……わあっ! "水の流れに包まれる千。" リン: セーーーン!だいじょぶかあ!? 河の主: ……佳き哉(よきかな)…… 千: あっ…… "千の手に残る団子。" 湯婆婆: んん……? 従業員: 砂金だ!! 砂金だ!わあーっ! 湯婆婆: 静かにおし!お客さまがまだおいでなんだよ! 千!お客さまの邪魔だ、そこを下りな! 大戸を開けな!お帰りだ!! 河の主 あははははははははは…… 神様達 やんやーーやんやーー!! 湯婆婆: セーン!よくやったね、大もうけだよ! ありゃあ名のある河の主だよ~。みんなも千を見習いな!今日は一本付けるからね。 皆: おぉーー!! 湯婆婆: さ、とった砂金を全部だしな! 皆: えぇーーっ!そりゃねえやな…… "仕事が終わって、部屋の前でくつろぐ千。" リン: 食う?かっぱらってきた。 千: ありがとう。 リン: あー、やれやれ…… 千: ……ハク、いなかったねー。 リン: まぁたハクかよー。……あいつ時々いなくなるんだよ。噂じゃさぁ、湯婆婆にやばいことやらされてんだって。 千: そう…… 女 リン、消すよー。 リン: あぁ。 千: 街がある……海みたい。 リン: あたりまえじゃん、雨が降りゃ海くらいできるよ。 おれいつかあの街に行くんだ。こんなとこ絶対にやめてやる。 "ふと、団子をかじってみる千。" 千: ヴッ…うぅっ…… リン: ん?……どうした? "人気のない大湯に忍び込む青蛙。" 青蛙: ん?んんーーっ…… ……砂金だ!……あ。 おぬし!何者だ。客人ではないな。そこに入ってはいけないのだぞ! ……おっ!おっ、金だ金だ!こ、これをわしにくれるのか? カオナシ: あ、あ…… 青蛙: き、金を出せるのか? カオナシ: あ、あ、…… 青蛙: くれ~っ!! 青蛙: わあっ!!! "カオナシにひとのみにされる青蛙。" 兄役 誰ぞそこにおるのか?消灯時間はとうに過ぎたぞ。 うっ……? カオナシ: 兄役どの、おれは腹が減った。腹ぺこだ! 兄役 そ、その声は…… カオナシ: 前金だ、受け取れ。わしは客だぞ、風呂にも入るぞ。みんなを起こせぇっ! 千: お父: さんお母: さん、河の神様からもらったお団子だよ。これを食べれば人間に戻れるよ、きっと! "たくさんの豚が一斉にこっちを見る。" 千: お父: さんお母: さんどこ?おとうさーん…… 千: ハッ!……やな夢。 ……リン?……誰もいない…… 千: わぁっ、本当に海になってる! ここからお父: さんたちのとこ見えるんだ。 釜爺がもう火を焚いてる。そんなに寝ちゃったのかな…… 兄役 お客さまがお待ちだ、もっと早くできんのか!? 父役: 生煮えでもなんでもいい、どんどんお持ちしろ! リン: セーン! 千: リンさん。 リン: 今起こしに行こうと思ったんだ。見な! 本物の金だ、もらったんだ。すげー気前のいい客が来たんだ。 "大湯に浸かってごちそうを食べまくるカオナシ。" カオナシ: おれは腹ぺこだ。ぜーーんぶ持ってこい! 千: そのお客さんって…… リン: 千も来い。湯婆婆まだ寝てるからチャンスだぞ。 千: あたし釜爺のとこ行かなきゃ。 リン: 今 釜爺のとこ行かない方がいいぞ、たたき起こされてものすごい不機嫌だから! 女たち リン、もいっかい行こ! リン: ああ! "部屋に戻る千。" 千: ……おとうさんとおかあさん、分からなかったらどうしよう。おとうさんあんまり太ってたらやだなー。 はあ…… "海の中を白い竜が式神に追いかけられていく。" 千: ん?……あぁっ! 橋のとこで見た竜だ!こっちに来る! なんだろう、鳥じゃない!……ひゃっ! ハクーっ、しっかりーっ!こっちよーっ!!……ハク!? ハクーっ!! "部屋に竜が飛び込む。窓を閉めようとする千に、式神が飛びかかる。" 千: うわぁっ!わぁああーっ!!……あっ? ……ただの紙だ…… 千: ハクね、ハクでしょう? ケガしてるの?あの紙の鳥は行ってしまったよ。もう大丈夫だよ。……わっ! 湯婆婆のとこへ行くんだ。どうしよう、ハクが死んじゃう! "竜を追って走り出す千の肩に式神が張り付く。" 兄役 そーれっ、さーてはこの世に極まれる♪お大尽さまのおなりだよ♪そーれっ 皆: いらっしゃいませ!! 兄役 それおねだり♪あ、おねだり♪おねだり♪ "騒ぎの中をエレベータへ駆けていく千。" 蛙男 おっ…と。こら、何をする。 千: 上へ行くんです。 蛙男 駄目だ駄目だ。……ん?あっ!血だ!! 千: あっ…… 兄役 どけどけ!お客さまのお通りだ! 千: あ、あのときはありがとうございます。 兄役 何をしてる、早ぅど……うっ!? カオナシ: あ、あ、あ…… "千に両手いっぱいの金を差し出す。" カオナシ: え、え、…… 千: ……欲しくない。いらない! カオナシ: え、え…… 千: 私忙しいので、失礼します! "こぼした金に群がる群衆をすり抜けて千が出ていく。" 兄役 ええい、静まれ!静まらんか!!下がれ下がれ! これは、とんだご無礼を致しました。なにぶん新米の人間の小娘でございまして…… カオナシ: ……おまえ、何故笑う。笑ったな。 兄役 ぇえっ、めっそうもない! 兄役・湯女: わっ、わっ、わああっ! "丸呑みにされる兄役と湯女。皆がパニックで散っていく。" "窓からパイプづたいにはしごへ行こうとする千。走り出すと、パイプが外れて崩れていく。" 千: わっ、わっ、わっ、わあっっ!! "かろうじてはしごに飛びつく千。はしごを登り出す。" 千: はぁっ、はぁっ……あっ!湯婆婆! うっ、くっ……くっ!くっ…あぁっ! "窓を押し開けようとする千。式神がカギを外して中に落ちる。坊の部屋へ。" 湯婆婆: 全くなんてことだろねぇ。 千: ! 湯婆婆: そいつの正体はカオナシだよ。そう、カ オ ナ シ! 欲にかられてとんでもない客を引き入れたもんだよ。あたしが行くまでよけいなことをすんじゃないよ! …あぁあ~、敷物を汚しちまって。おまえたち、ハクを片づけな! 千: はっ! 湯婆婆: もうその子は使いもんにならないよ! 千: あっ……あ、あ、あ…… "クッションの中に隠れる千。湯婆婆が来てクッションを探る。" 湯婆婆: ばぁ~。 坊: んんーー、ああー……ああーー…… 湯婆婆: もぅ坊はまたベッドで寝ないで~。 坊: あ…あああーーーん、ああーん…… 湯婆婆: あぁああごめんごめん、いい子でおねんねしてたのにねぇ。ばぁばはまだお仕事があるの。 (ブチュ) いいこでおねんねしててねぇ~。 千: ……あっ!…ぅう痛い離してっ!あっ、助けてくれてありがとう、私急いで行かなくちゃならないの、離してくれる? 坊: おまえ病気うつしにきたんだな。 千: えっ? 坊: おんもにはわるいばいきんしかいないんだぞ。 千: 私、人間よ。この世界じゃちょっと珍しいかもしれないけど。 坊: おんもは体にわるいんだぞ。ここにいて坊とおあそびしろ。 千: あなた病気なの? 坊: おんもにいくと病気になるからここにいるんだ。 千: こんなとこにいた方が病気になるよ!……あのね、私のとても大切な人が大けがしてるの。だからすぐいかなきゃならないの。お願い、手を離して! 坊: いったらないちゃうぞ。坊がないたらすぐばぁばがきておまえなんかころしちゃうぞ。こんな手すぐおっちゃうぞ。 千: うぅ痛い痛い!……ね、あとで戻ってきて遊んであげるから。 坊: ダメ今あそぶの! 千: うぅっ……… 坊: ……あ? 千: 血!わかる?!血!! 坊: ……うわぁあーーああぁあぁあーーーー!!!! 千: あっ!ハクーーーー! 何すんの、あっち行って!しっしっ!ハク、ハクね!?しっかりして! 静かにして!ハク!?……あっ! "湯バードにたかられる千。その隙に頭たちがハクを落とそうとする。" 千: あっ、わっ……あっち行って! あっ!だめっ!! "部屋から坊が出てくる。" 坊: んんっ……んんんっ…… 血なんかへいきだぞ。あそばないとないちゃうぞ。 千: 待って、ね、いい子だから! 坊: 坊とあそばないとないちゃうぞ……ぅええ~~…… 千: お願い、待って! 式神 ……うるさいねぇ。静かにしておくれ。 坊: ぇえ……? 式神 あんたはちょっと太り過ぎね。 "床から銭婆が現われる。" 銭婆: やっぱりちょっと透けるわねえ。 坊: ばぁば……? 銭婆: やれやれ。お母: さんとあたしの区別もつかないのかい。 "魔法でねずみにされる坊。" 銭婆: その方が少しは動きやすいだろ? さぁてと……おまえたちは何がいいかな? "湯バードはハエドリに、頭は坊にされる。" 千: あっ…… 銭婆: ふふふふふふ、このことはナイショだよ。誰かに喋るとおまえの口が裂けるからね。 千: あなたは誰? 銭婆: 湯婆婆の双子の姉さ。おまえさんのおかげでここを見物できて面白かったよ。さぁその竜を渡しな。 千: ハクをどうするの?ひどいケガなの。 銭婆: そいつは妹の手先のどろぼう竜だよ。私の所から大事なハンコを盗みだした。 千: ハクがそんなことしっこない!優しい人だもん! 銭婆: 竜はみんな優しいよ…優しくて愚かだ。魔法の力を手に入れようとして妹の弟子になるなんてね。 この若者は欲深な妹のいいなりだ。さぁ、そこをどきな。どのみちこの竜はもう助からないよ。ハンコには守りの呪い(まじない)が掛けてあるからね、盗んだものは死ぬようにと…… 千: ……いや!だめ! "坊になった頭が坊ネズミとハエドリを虐めている。" 銭婆: なんだろね、この連中は。これおやめ、部屋にお戻りな。 白竜 グゥ…! "隙をついて竜の尾が式神を引き裂く。" 銭婆: !……あぁら油断したねぇ~…… "反動で落ちる竜と千、坊ネズミ、ハエドリ。" 千: ハク、あ、きゃああーーーっ!! ハクーーーっ!! "落ちていく中で水の幻影が浮かぶ。" "力を振り絞って横穴に入る竜。換気扇を破ってボイラー室に出る。" 釜爺: なっ……わあっ!! 千: ハク! 釜爺: なにごとじゃい!ああっ、待ちなさい! 千: ハクっ!苦しいの!? 釜爺: こりゃあ、いかん! 千: ハクしっかり!どうしよう、ハクが死んじゃう! 釜爺: 体の中で何かが命を食い荒らしとる。 千: 体の中?! 釜爺: 強い魔法だ、わしにゃあどうにもならん…… 千: ハク、これ河の神様がくれたお団子。効くかもしれない、食べて! ハク、口を開けて!ハクお願い、食べて!……ほら、平気だよ。 釜爺: そりゃあ、苦団子か? 千: あけてぇっ…いい子だから……大丈夫。飲み込んで! 白竜 グォウッ、グオッ……! 釜爺: 出たっ、コイツだ! 千: あっ! ハンコ! 釜爺: 逃げた!あっちあっち、あっち! 千: あっ、あっ!あぁあああっ、ああああっ! (ベチャッ!) 釜爺: えーんがちょ、せい!えーんがちょ!! 切った! 千: おじさんこれ、湯婆婆のおねえさんのハンコなの! 釜爺: 銭婆の?…魔女の契約印か!そりゃあまた、えらいものを…… 千: ああっ、やっぱりハクだ!おじさん、ハクよ! 釜爺: おお……お…… 千: ハク!ハク、ハクーっ! おじさん、ハク息してない! 釜爺: まだしとるがな。……魔法の傷は油断できんが。 釜爺: ……これで少しは落ち着くといいんじゃが…… ハクはな、千と同じように突然ここにやってきてな。魔法使いになりたいと言いおった。 ワシは反対したんだ、魔女の弟子なんぞろくな事がないってな。聞かないんだよ。もう帰るところはないと、とうとう湯婆婆の弟子になっちまった。 そのうちどんどん顔色が悪くなるし、目つきばかりきつくなってな…… 千: 釜爺さん、私これ、湯婆婆のおねえさんに返してくる。 返して、謝って、ハクを助けてくれるよう頼んでみる。お姉さんのいるところを教えて。 釜爺: 銭婆の所へか?あの魔女は怖えーぞ。 千: お願い。ハクは私を助けてくれたの。 わたし、ハクを助けたい。 釜爺: うーん……行くにはなぁ、行けるだろうが、帰りがなぁ……。待ちなさい。 たしか……どこに入れたか…… 千: みんな、私の靴と服、お願いね。
↓大阪弁でいうと…
父: 千尋。千尋、もうすぐだよ。 母: やっぱり田舎ねー。買い物は隣町に行くしかなさそうね。 父: 住んで都にするしかないさ。 ほら、あれが小学校だよ。千尋、新しい学校だよ。 母: 結構きれいな学校やない。 "しぶしぶ起きあがってあかんべをする千尋。" 千尋 前の方がええもん。 …あっ、あああ!!おかあはん、お花しおれてっちゃった! 母: あんはん、ずーっと握りしめてるんだもの。おうちについたら水切りすれば大丈夫よ。 千尋 初めてもろた花束が、お別れの花束なんて悲しい…… 母: あら。この前のお誕生日にバラの花をもろたやない? 千尋 一本ね、一本や花束って言えへんわ。 母: カードが落ちたわ。 窓開けるわよ。もうしゃんとしてちょうだい!今日は忙しいんやから。 父: あれ?道を間違えたかな?おかしいな…… 母: あそこやない?ほら。 父: ん? 母: あの隅の青い家でしょ? 父: あれや。一本下の道を来ちゃったんだな。……このまんま行っていけるのかな。 母: やめてよ、そうやっていつも迷っちゃうんやから。 父: ちーとばかしだけ、ねっ。 千尋 あのうちみたいの何? 母: 石のほこら。神様のおうちよ 父: おとうはん、大丈夫? 父: まかせとけ、この車は四駆だぞ! 千尋 うぁっ― 母: 千尋、座ってなさい。 千尋 あっ、うわっ……わっ、わっ!! ぅああああああっ! 母: あんはん、ええかげんにして! 父: 行き止まりだ! 母: なあに?この建物。 父: 門みたいやね。 母: あんはん、もどりまひょ、あんはん。 千尋?…もぅ。 父: 何だ、モルタル製か。結構新しい建物だよ。 千尋 ……風を吸込んでる…… 母: なぁに? 父: ちーとばかし行ってみない?むこうへ抜けられるんや。 千尋 ここいやや。戻ろうおとうはん! 父: なーんや。恐がりだな千尋は。ねっ、ちーとばかしだけ。 母: 引越センターのトラックが来ちゃうわよ。 父: 平気だよ、カギは渡してあるし、全部やってくれるんやろ? 母: そりゃそうやけど…… 千尋 いやだ、わい行かないよ! 戻ろうよ、おとうはん! 父: おいで、平気だよ。 千尋 わい行かない!! うぅ……あぁっ! 母: 千尋は車の中で待ってなさい。 千尋 ぅぅ……おかあさーん! まってぇーっ! 父: 足下気をつけな。 母: 千尋、そないなにくっつかないで。歩きにくいわ。 千尋 ここどこ? 母: あっ。ほら聞こえる。 千尋 ……電車の音! 母: 案外 駅が近いのかもしれへんね。 父: いこう、すぐわかるさ。 千尋 こないなとこに家がある…… 父: やっぱり間違おらへんな。テーマパークの残骸だよ、これ。 90年頃にあっちこっちでようけ計画されてさ。バブルがはじけてみんな潰れちゃったんや。これもその1つだよ、きっと。 千尋 えぇーっ、まだいくの!?おとうはん、もう帰ろうよぅ! ねぇーーーっ!! 千尋 おかあはん、あの建物うなってるよ。 母: 風鳴りでしょ。気持ちええとこねー、車の中のサンドイッチ持ってくれば良かった。 父: 川を作ろうとしたんだねー。 ん?なんか匂いまへん? 母: え? 父: ほら、うまそうな匂いがする。 母: あら、ホンマね。 父: 案外まだやってるのかもしれへんよ、ここ。 母: 千尋、はやくしなさい。 千尋 まーってー! 父: ふん、ふん……こっちや。 母: あきれた。これ全部 食べ物屋よ。 千尋 どなたはんもおらへんねー。 父: ん?あそこだ! おーい、おーい。 はぁー。うん、わぁ。 こっちこっち。 母: わぁー、どエライわねー。 父: すみませーん、どなたかいまへんかー? 母: 千尋もおいで、おいしそうよ。 父: すいませーん!! 母: ええわよ、そのうち来たらお金払えばええんやから。 父: そうだな。そっちにええやつが…… 母: これなんていう鳥かしら。……おいしい!千尋、すっごくおいしいよ! 千尋: いりまへん!ねぇ帰ろ、お店の人に怒られるよ。 父: 大丈夫、お父はんがついてるんやから。カードも財布も持ってるし。 母: 千尋も食べな。骨まで柔らかいよ。 父: 辛子。 母: ありがと。 千尋: おかぁはん、おとぅはん!! "諦めて歩き出す千尋。油屋の建物を見つける。" 千尋: へんなの。 千尋: 電車だ!……? ハク: ……!! ここへ来てははいけへん!!すぐ戻れ! 千尋: えっ? ハク: じきに夜になる!その前に早く戻れ! …もう明かりが入った、急いで!わいが時間を稼ぐ、川の向こうへ走れ!! 千尋: なによあいつ…… "明かりが入るといっぺんに、ようけの影が動き出す。" 千尋: ………!!おとうさーん! おとうはん帰ろ、帰ろう、おとうさーん!! "座っとった豚が振り向く。" 千尋: ひぃぃ……っ "豚がたたかれて倒れる。" 豚 ブギィィィ!! 千尋: ぅわぁあーっ! おとおさーん、おかあさーん!! おかあさーん、ひっ! ぎゃああーーっ!! 千尋: ひゃっ!…水だ! うそ……夢だ、夢だ!さめろさめろ、さめろ! さめてぇ……っ…… これはゆめだ、ゆめや。みんな消えろ、消えろ。きえろ。 あっ……ぁあっ、透けてる!ぁ……夢だ、絶対夢だ! "船が接岸し、春日さまが出てくる。" 千尋: ひっ……ひっ、ぎゃあああーーっ!! "千尋を捜すハク。暗闇にいる千尋を見つけて肩を抱く。" 千尋: っっっ!!! ハク: 怖がるな。わいはそなたの味方や。 千尋: いやっ、やっ!やっっ!! ハク: 口を開けて、これを早く。この世界のものを食べないとそなたは消えてしまうわ。 千尋: いやっ!!……っ!? ハク: 大丈夫、食べても豚にはならへん。噛んで飲みなさい。 千尋: ……ん……んぅ……んー……っ ハク: もう大丈夫。触ってごらん。 千尋: さわれる…… ハク: ね?さ、おいで。 千尋: おとうはんとおかあはんは?どこ?豚なんかになってへんよね!? ハク: 今は無理やけど必ず会えるよ。……! 静かに!! "ハクが千尋を壁に押しつけると、上空を湯バードが飛んでいく。" ハク: そなたを捜しとるのや。時間がない、走ろう! 千尋: ぁっ……立てへん、どうしよう!力が入んない…… ハク: 落ち着いて、深く息を吸ってごらん……そなたの内なる風と水の名において……解き放て…… 立って! 千尋: あっ、うわっ! "走り出す二人。" ハク: ……橋を渡る間、息をしてはいけへんよ。 ちーとばかしでも吸ったり吐いたりすると、術が解けて店の者に気づかれてしまうわ。 千尋: こわい…… ハク: 心を鎮めて。 従業員: いらっしゃいませ、お早いお着きで。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。 ハク: 所用からの戻りや。 従業員: へい、お戻りおくんなはれませ。 ハク: 深く吸って…止めて。 "カオナシが千尋を見送る。" 湯女: いらっしゃい、お待ちしてたんやよ。 ハク: しっかり、もうちびっと。 青蛙: ハク様ぁー。何処へ行っておったー? 千尋: ……!ぶはぁっ 青蛙: ひっ、人か? ハク: ……!走れ! 青蛙: ……ん?え、え? "青蛙に術をかけて逃げるハク。" 従業員: ハク様、ハク様!ええい匂わぬか、人が入り込んだぞ!臭いぞ、臭いぞ! ハク: 勘づかれたな…… 千尋: ごめん、わい 息しちゃった…… ハク: いや、千尋はよく頑張った。これからどうするか離すからよくお聞き。ここにいては必ず見つかる。 わいが行って誤魔化すから、そのすきに千尋はここを抜け出して…… 千尋: いや!行かないで、ここにいて、お願い! ハク: この世界で生き延びるためにはそうするしかないんや。ご両親を助けるためにも。 千尋: やっぱり豚になりよったの夢やないんだ…… ハク: じっとして…… 騒ぎが収まったら、裏のくぐり戸から出られる。外の階段を一番下まで下りるんや。そこにボイラー室の入口がある。火を焚くトコや。 中に釜爺ちう人がおるから、釜爺に会うんや。 千尋: 釜爺? ハク: その人にここで働きたいと頼むんや。断られても、粘るんだよ。 ここでは仕事を持たない者は、湯婆婆に動物にされてしまうわ。 千尋: 湯婆婆…って? ハク: 会えばすぐに分かる。ここを支配しとる魔女や。嫌だとか、帰りたいとか言わせるように仕向けてくるけど、働きたいとだけ言うんや。辛くても、耐えて機会を待つんだよ。そうすれば、湯婆婆には手は出せへん。 千尋: うん…… 従業員: ハク様ぁー、ハク様ー、どちらにおいでやろかー? ハク: いかなきゃ。忘れへんで、わいは千尋の味方やからね。 千尋: どうしてわいの名を知ってるの? ハク: そなたの小さいときから知ってんねん。わいの名は――ハクや。 ハク: ハクはここにいるぞ。 従業員: ハク様、湯婆婆さまが…… ハク: 分かってんねん。そのことで外へ出とった。 "階段へ向う千尋。恐る恐る踏み出し、一段滑り落ちる。" 千尋: ぃやっ! はっ、はぁっ…… "もう一段踏み出すと階段が壊れ、はずみで走り出す。" 千尋: わ…っいやああああーーーーっ!やあぁああああああー!! "なんとか下まで降り、そろそろとボイラー室へむかうわ。" "ボイラー室で釜爺をみて後ずさりし、熱い釜に触ってしまうわ。" 千尋: あつっ…! "カンカンカンカン(ハンマーの音)" 千尋: あの……。すみまへん。 あ、あのー……あの、釜爺はんやろか? 釜爺: ん?……ん、んんーー?? 千尋: ……あの、ハクちう人に言われてきたんや。ここで働かせておくんなはれ! "リンリン(呼び鈴の音)" 釜爺: ええい、こないなにいっぺんに…… チビども、仕事だー! "カンカンカンカンカンカン" 釜爺: わしゃあ、釜爺や。風呂釜にこき使われとるじじいや。 チビども、はやくせんか! 千尋: あの、ここで働かせておくんなはれ! 釜爺: ええい、手は足りとる。そこら中ススだらけやからな。なんぼでも代わりはおるわい。 千尋: あっ、ごめんなさい。 あっ、ちーとばかし待って。 釜爺: やまやま! 千尋: ……あっ。 "重さで潰れたススワタリの石炭を持ち上げる千尋。ススワタリは逃げ帰ってゆく。" 千尋: あっ、どうするのこれ? ここにおいといてええの? 釜爺: 手ぇ出すならしまいまでやれ! 千尋: えっ?…… "石炭を釜に運ぶと、ススワタリみんなが潰れた真似をしだす。" "カンカンカンカン" 釜爺: こらあー、チビどもー!ただのススにもどりてぇのか!? あんたも気まぐれに手ぇ出して、人の仕事を取っちゃならね。働かなきゃな、こいつらの魔法は消えちまうんや。 ここにあんたの仕事はねぇ、他を当たってくれ。 ……なんだおまえたち、文句があるのか?仕事しろ仕事!! リン: メシだよー。なぁんだまたケンカしてんのー? よしなさいよもうー。うつわは?ちゃんと出しといてって言ってるのに。 釜爺: おお……メシだー、休憩ー! リン: うわ!? 人間がいちゃ!…やばいよ、さっき上で大騒ぎしてたんだよ!? 釜爺: わしの……孫や。 リン: まごォ?! 釜爺: 働きたいと言うんやけど、ここは手が足りとる。おめぇ、湯婆婆ンとこへ連れてってくれねえか?後はオノレでやるやろ。 リン: やなこった!あたいが殺されちまうよ! 釜爺: これでどや?イモリの黒焼き。上物だぞ。 どのみち働くには湯婆婆と契約せにゃならん。オノレで行って、運を試しな。 リン: ……チェッ!そこの子、ついて来な! 千尋: あっ。 リン: …あんたネェ、はいとかお世話になるんやとか言えへんの!? 千尋: あっ、はいっ。 リン: どんくさいね。はやくおいで。 靴なんか持ってどうすんのさ、靴下も! 千尋: はいっ。 リン: あんた。釜爺にお礼言ったの?世話になりよったんやろ? 千尋: あっ、うっ!……おおきに。 釜爺: グッドラック! リン: 湯婆婆は建物のてっぺんのその奥にいるんや。 早くしろよォ。 千尋: あっ。 リン: 鼻がなくなるよ。 千尋: っ… リン: もう一回乗り継ぐからね。 千尋: はい。 リン: いくよ。 ……い、いらっしゃいませ。 お客さま、このエレベーターは上へは参りまへん。他をお探しくれへんかの。 千尋: ついてくるよ。 リン: きょろきょろすんやないよ。 蛙男 到着でおまんねん。 右手のお座敷でおまんねん。 ?……リン。 リン: はーい。(ドン!) 千尋: ぅわっ! 蛙男 なんか匂わぬか?人間だ、おまえ人間くさいぞ。 リン: そーやろかぁー?? 蛙男 匂う匂う、うまそうな匂いや。おまえなんか隠しておるな?正直に申せ! リン: この匂いでしょ。 蛙男 黒焼き!……くれぇーっ! リン: やなこった。お姉さま方に頼まれてんだよ。 蛙男 頼む、ちーとばかしだけ、せめて足一本! リン: 上へ行くお客さまー。レバーをお引き下さーい。 "『二天』につくが、『天』まで千尋を連れて行くおしらさま。" "奥のドアを開けようとする千尋。" 湯婆婆: ……ノックもせんのかい!? 千尋: やっ!? 湯婆婆: ま、みっともない娘が来たもんやね。 さぁ、おいで。……おいでーな~。 千尋: わっ!わ……っ!! いったぁ~…… "頭が寄ってくる。" 千尋: ひっ、うわぁ、わあっ……わっ! 湯婆婆: うるさいね、静かにしておくれ。 千尋: あのー……ここで働かせておくんなはれ! "魔法で口チャックされる千尋。" 湯婆婆: 馬鹿なおしゃべりはやめとくれ。そないなひょろひょろに何が出来るのさ。 ここはね、人間の来るトコやないんや。八百万の神様達が疲れをいやしに来るお湯屋なんだよ。 それなのにおまえの親はなんだい?お客さまの食べ物を豚のように食い散らして。当然の報いさ。 おまえも元の世界には戻れへんよ。 ……子豚にしてやろうわ。ぇえ?石炭、ちう手もあるね。 へへへへへっ、震えとるね。……でもまあ、良くここまでやってきたよ。どなたはんかが親切に世話を焼いたんやね。 誉めてやらなきゃ。どなたはんだい、それは?教えておくれな…… 千尋: ……あっ。ここで働かせておくんなはれ! 湯婆婆: まァだそれを言うのかい! 千尋: ここで働きたいんや! 湯婆婆: だァーーーまァーーーれェーーー!!! 湯婆婆: なんであたしがおまえを雇わなきゃならへんんだい!?見るからにグズで!甘ったれで!泣き虫で!頭の悪い小娘に、仕事なんかあるもんかね! お断りやね。これ以上穀潰しを増やしてどうしようっていうんだい! それとも……一番つらーーいきつーーい仕事を死ぬまでやらせてやろうかぁ……? 湯婆婆: ……ハッ!? 坊: あーーーーん、あーーん、ああああーーー 湯婆婆: やめなさいどうしたの坊や、今すぐ行くからええ子でいなさいね……まだいたのかい、さっさと出て行きな! 千尋: ここで働きたいんや! 湯婆婆: 大きな声を出すんやない……うっ!あー、ちーとばかし待ちなさい、ね、ねぇ~。ええ子やから、ほぉらほら~。 千尋: 働かせておくんなはれ!! 湯婆婆: わかったから静かにしておくれ! おおぉお~よ~しよし~…… "紙とペンが千尋の方へ飛んでくる。" 湯婆婆: 契約書だよ。そこに名前を書きな。働かせてやる。その代わり嫌だとか、帰りたいとか言ったらすぐ子豚にしてやるからね。 千尋: あの、名前ってここやろか? 湯婆婆: そうだよもぅぐずぐずせんでさっさと書きな! まるっきし……しょーもない誓いをたてちまったもんだよ。働きたい者には仕事をやるだなんて…… 書いたかい? 千尋: はい……あっ。 湯婆婆: フン。千尋ちうのかい? 千尋: はい。 湯婆婆: 贅沢な名だねぇ。 今からおまえの名前は千や。ええかい、千だよ。分かったら返事をするんだ、千!! 千: は、はいっ! ハク: お呼びやろか。 湯婆婆: 今日からその子が働くよ。世話をしな。 ハク: はい。……名はなんちう? 千: え?ち、…ぁ、千や。 ハク: では千、来なさい。 千: ハク。あの…… ハク: 無駄口をきくな。わいのことは、ハク様と呼べ。 千: ……っ 父役: なんぼ湯婆婆さまのおっしゃりでも、それは…… 兄役 人間は困るんや。 ハク: 既に契約されたのや。 父役: なんと…… 千: よろしゅうお願いしまんねん。 湯女: あたしらのとこには寄こさないどくれ。 湯女: 人臭くてかなわんわい。 ハク: ここの物を三日も食べれば匂いは消えようわ。それで使い物にならなければ、焼こうが煮ようが好きにするがええ。 仕事に戻れ!リンは何処や。 リン: えぇーっ、あたいに押しつけんのかよぅ。 ハク: 手下をほしがっとったな。 父役: そうそう、リンが適役だぞ。 リン: えーっ。 ハク: 千、行け。 千: はいっ。 リン: やってらんねぇよ!埋め合わせはしてもらうからね! 兄役 はよいけ。 リン: フン!……来いよ。 リン: ……おまえ、うまくやったなぁ! 千: えっ? リン: おまえトロイからさ、心配してたんや。油断するなよ、わかんないことはおれに聞け。な? 千: うん。 リン: ……ん?どうした? 千: 足がふらふらするの。 リン: ここがおれたちの部屋だよ。食って寝りゃ元気になるさ。 前掛け。オノレで洗うんだよ。…袴。チビやからなぁ……。でかいな。 千: リンはん、あの…… リン: なに? 千: ここにハクっていうひと二人いるの? リン: 二人ぃ?あないなの二人もいたらたまんないよ。……だめか。 あいつは湯婆婆の手先やから気をつけな。 千: ……んっ……ん…… リン: ……おかしいな…あああ、あったあった。ん? おい、どうしたんだよ?しっかりしろよぅ。 女 うるさいなー。なんだよリン? リン: 気持ち悪いんだって。新入りだよ。 "湯婆婆が鳥になって飛んでいく。見送るハク。" "寝とる千のもとへ、ハクが忍んでくる。" ハク: 橋の所へおいで。お父: はんとお母: はんに会わせてあげる。 "部屋を抜け出す千。" 千: 靴がない。 ……あ。ありがとうわ。 "ススワタリに手を振る千。" "橋の上でカオナシに会うわ。" ハク: おいで。 "花の間を通り畜舎へ。" 千: ……おとうはんおかあはん、わいよ!……せ、千よ!おかあはん、おとうはん! 病気かな、ケガしてる? ハク: いや。おなかが一杯で寝とるんだよ。人間やったことは今は忘れてんねん。 千: うっ……くっ……おとうはんおかあはん、きっと助けてあげるから、あんまり太っちゃだめだよ、食べられちゃうからね!! "垣根の下でうずくまる千。ハクが服を渡す。" ハク: これは隠しておきな。 千: あっ!……捨てられたかと思ってた。 ハク: 帰るときにいるやろう? 千: これ、お別れにもろたカード。ちひろ?……千尋って……わいの名だわ! ハク: 湯婆婆は相手の名を奪って支配するんや。いつもは千でいて、ホンマの名前はしっかり隠しておくんだよ。 千: わい、もう取られかけてた。千になりかけてたもん。 ハク: 名を奪われると、帰り道が分からなくなるんだよ。わいはどうしても思い出せへんんや。 千: ハクのホンマの名前? ハク: でも不思議やね。千尋のことは覚えとった。 お食べ、ご飯を食べてなかったろ? 千: 食べたくない…… ハク: 千尋の元気が出るように呪い(まじない)をかけて作ったんや。お食べ。 千: ……ん……ん、んっ………うわぁああーー、わぁああーーー、あぁああーーん…… ハク: つらかったろうわ。さ、お食べ。 千: ひっく……うぁあーーん…… ハク: 一人で戻れるね? 千: うん。ハクありがとう、わいがんばるね。 ハク: うん。 "帰り際、空に昇る白い竜を見つける。" 千: わぁっ。 "釜爺が水を飲みに起き、寝とる千を見つける。座布団を掛けてやる" "湯婆婆が戻ってくる。" リン: どこ行ってたんだよ。心配してたんだぞ。 千: ごめんなさい。 "名札を掛けるのに手間取る千。" 湯女: やまだねぇ。 リン: 千、もっと力はいんないの? 兄役 リンと千、今日から大湯番や。 リン: えぇーっ、あれは蛙の仕事やろ! 兄役 上役の命令や。骨身を惜しむなよ。 "水を捨てに来る千。外に立っとるカオナシを見つける。" 千: あの、そこ濡れまへんか? リン: 千、早くしろよ! 千: はーーい。……ここ、開けときまんねんね。 湯女: リン、大湯だって? リン: ほっとけ! リン: ひでぇ、ずーっと洗ってへんぞ。 "転ぶ千。" 千: うわっ!……あーっ。 リン: ここの風呂はさ、汚しのお客専門なんだよ。うー、こびりついてて取れやしねえ。 兄役 リン、千。一番客が来ちまうぞ。 リン: はーーい今すぐ!チッ、下いびりしやがって。 一回 薬湯入れなきゃダメや。千、番台行って札もろてきな。 千: 札?……うわっ! リン: 薬湯の札だよ! 千: はぁーい。……リンはん、番台ってなに? 湯婆婆: ん?…なんやろうね。なんか来たね。 雨に紛れてろくでもないものが紛れ込んだかな? "街を進んでくるオクサレさま。" 番台蛙: そないなもったおらへんことが出来るか!……おはようおまんねん!良くお休みになられたんやか! 湯女: 春日様。 番台蛙: はい、硫黄の上!……いつまでいたって同じだ、戻れ戻れ!手でこすればええんだ! おはようおまんねん!……手を使え手を! 千: でも、あの、薬湯やないとダメだそうや。 番台蛙: わからんやつだな……あっ、ヨモギ湯やね。どーぞごゆっくり…… 千: あっ…… "背後にカオナシを見つけて会釈する千。" 番台蛙: んん? "リリリリリ" 番台蛙: はい番台や!…あっ、……うわっ!? 千: あっ!ありがとうおまんねん!! 番台蛙: あー、ちゃう!こら待て、おい! 湯婆婆: どしたんだい!? 番台蛙: い、いえ、なんでもおまへん。 湯婆婆: なにか入り込んでるよ。 番台蛙: 人間やろか。 湯婆婆: それを調べるんや。今日はハクがおらへんからね。 リン: へぇーずいぶんええのくれたやん。 これがさ、釜爺のとこへ行くんや。混んでないからすぐ来るよきっと。 これを引けばお湯が出る。やってみな。 千: うわっ!…… リン: 千てホンマドジなー。 千: うわ、どエライ色…… リン: こいつにはさ、ミミズの干物が入ってんや。こんだけ濁ってりゃこすらなくても同じだな。 いっぱいになりよったらもう一回引きな、止まるから。もう放して大丈夫だよ。おれ朝飯取ってくんな! 千: はぁーい。……あっ。 "カオナシを見つける。風呂の縁から落ちる千。" 千: うわっ!……いったぃ…った…… あの、お風呂まだなんや。 わ…こないなにようけ…… えっ、わいにくれるの? カオナシ: あ、あ、…… 千: あの……それ、そないなにいりまへん。 カオナシ: あ、… 千: だめよ。ひとつでええの。 カオナシ: あ…… 千: え…あっ! "釜から水があふれる。" 千: うわぁっ!! 父役: 奥様! 湯婆婆: クサレ神だって!? 父役: それも特大のオクサレさまや! 従業員: まっすぐ橋へ向かってきまんねん! 従業員達 お帰りくれへんかの、お帰りくれへんかの! 青蛙: お帰りくれへんかの、お引き取りくれへんかの、お帰りくれへんかの! うっ……くっさいぃ~…! 湯婆婆: ぅう~ん…おかしいね。クサレ神なんかの気配やなかったんやけど…… 来ちまったものは仕方がない。お迎えしな! こうなりよったら出来るだけはやく引き取ってもらうしかないよ! 兄役 リンと千、湯婆婆様がお呼びや。 千: あ、はいっ! 湯婆婆: ええかい、おまえの初仕事や。これから来るお客を大湯で世話するんだよ。 千: ……あの~…… 湯婆婆: 四の五の言うと、石炭にしちまうよ。わかったね! 父役: み、見えたんや……ウッ… 湯婆婆・千: ウゥッ……!! 湯婆婆: …おやめ!お客はんに失礼だよ! が・が・……ヨク オコシクダしゃいマシタ…… え?あ オカネ……千!千!早くお受け取りな! 千: は、はいっ! (ベチャッ) 千: うゥ…! 湯婆婆: ナニ してるんだい…!ハヤク ご案内しな! 千: ど どうぞ …… リン: セーーーン! うぇっ……くっせえ…あっ、メシが! 湯婆婆: 窓をお開け!全部だよ!! "大湯に飛び込み、千に何ぞを促すオクサレさま。" 千: えっ?ぁ、……ちーとばかし待って! "上から見とる湯婆婆と父: 役。" 湯婆婆: フフフフ、汚いね。 父役: 笑い事ではおまへん。 湯婆婆: あの子どうするかね。 ……ほぉ、足し湯をする気だよ。 父役: あぁああ、汚い手で壁に触りおって! 千: あっ……あっ! "札を下げようとして落とす千。他の札を取って釜爺に送る。" 湯婆婆: んん?千に新しい札あげたのかい? 父役: まさかそないなもったおらへん…… 千: わっ! "湯の紐を引きながら落ちる千。ヘドロにはまる。" 父役: あああーっ、あないな高価な薬湯を! "オクサレさまに引っ張り出される千。何ぞに手を触れる" 千: ……?あっ? リン: セーーーン!千どこだ!! 千: リンはん! リン: だいじょぶかあ!釜爺にありったけのお湯出すように頼んできた!最高の薬湯おごってくれるって! 千: ありがとう!あの、ここにトゲみたいのが刺さってるの! リン: トゲーー?? 千: 深くて取れへんの! 湯婆婆: トゲ?トゲだって?……ううーん…… 下に人数を集めな! 父役: えぇっ? 湯婆婆: 急ぎな! 千とリン、そのお方はオクサレ神ではおまへんぞ! このロープをお使い! 千: はいっ! リン: しっかり持ってな! 千: はいっ! 湯婆婆: ぐずぐずするんやないよ!女も力を合わせるんだ! 千: 結びたんや! 湯婆婆: んーーー湯屋一同、心をこめて!!エイヤーーーーソーーーーレーーーー 一同 そーーーれ、そーーーーれ! そーーーれ、そーーーーれ! 千: 自転車? 湯婆婆: やはり!さぁ、きばるんだよ! "オクサレさまからようけのゴミが出てくる。" 河の主 はァーーー…… 千: うっわっ……わあっ! "水の流れに包まれる千。" リン: セーーーン!だいじょぶかあ!? 河の主: ……佳き哉(よきかな)…… 千: あっ…… "千の手に残る団子。" 湯婆婆: んん……? 従業員: 砂金だ!! 砂金だ!わあーっ! 湯婆婆: 静かにおし!お客さまがまだおいでなんだよ! 千!お客さまの邪魔だ、そこを下りな! 大戸を開けな!お帰りだ!! 河の主 あははははははははは…… 神様達 やんやーーやんやーー!! 湯婆婆: セーン!よくやったね、大もうけだよ! ありゃあ名のある河の主だよ~。みんなも千を見習いな!今日は一本付けるからね。 皆: おぉーー!! 湯婆婆: さ、とった砂金を全部だしな! 皆: えぇーーっ!そりゃねえやな…… "仕事が終わって、部屋の前でくつろぐ千。" リン: 食う?かっぱらってきた。 千: ありがとうわ。 リン: あー、やれやれ…… 千: ……ハク、いなかったねー。 リン: まぁたハクかよー。……あいつ時々いなくなるんだよ。噂やさぁ、湯婆婆にやばいことやらされてんだって。 千: そう…… 女 リン、消すよー。 リン: あぁ。 千: 街がある……海みたい。 リン: あたりまえやん、雨が降りゃ海くらいできるよ。 おれいつかあの街に行くんや。こないなとこ絶対にやめてやる。 "ふと、団子をかじってみる千。" 千: ヴッ…うぅっ…… リン: ん?……どうした? "人気のない大湯に忍び込む青蛙。" 青蛙: ん?んんーーっ…… ……砂金だ!……あ。 おぬし!何者や。客人ではおまへんな。そこに入ってはいけへんのだぞ! ……おっ!おっ、金だ金だ!こ、これをわしにくれるのか? カオナシ: あ、あ…… 青蛙: き、金を出せるのか? カオナシ: あ、あ、…… 青蛙: くれ~っ!! 青蛙: わあっ!!! "カオナシにひとのみにされる青蛙。" 兄役 どなたはんぞそこにおるのか?消灯時間はとうに過ぎたぞ。 うっ……? カオナシ: 兄役どの、おれは腹が減った。腹ぺこだ! 兄役 そ、その声は…… カオナシ: 前金だ、受け取れ。わしは客だぞ、風呂にも入るぞ。みんなを起こせぇっ! 千: お父: はんお母: はん、河の神様からもろたお団子だよ。これを食べれば人間に戻れるよ、きっと! "ようけの豚が一斉にこっちを見る。" 千: お父: はんお母: はんどこ?おとうさーん…… 千: ハッ!……やな夢。 ……リン?……どなたはんもおらへん…… 千: わぁっ、ホンマに海になってる! ここからお父: はんたちのとこ見えるんや。 釜爺がもう火を焚いてんねん。そないなに寝ちゃったのかな…… 兄役 お客さまがお待ちだ、もっと早くできんのか!? 父役: 生煮えでもなんでもええ、どんどんお持ちしろ! リン: セーン! 千: リンはん。 リン: 今起こしに行こうと思ったんや。見な! 本物の金だ、もろたんや。すげー気前のええ客が来たんや。 "大湯に浸かってごちそうを食べまくるカオナシ。" カオナシ: おれは腹ぺこや。ぜーーんぶ持ってこい! 千: そのお客はんって…… リン: 千も来い。湯婆婆まだ寝てるからチャンスだぞ。 千: あたし釜爺のとこ行かなきゃ。 リン: 今 釜爺のとこ行かない方がええぞ、たたき起こされてものどエライ不機嫌やから! 女たち リン、もいっかい行こ! リン: ああ! "部屋に戻る千。" 千: ……おとうはんとおかあはん、分からなかったらどうしようわ。おとうはんあんまり太ってたらやだなー。 はあ…… "海の中を白い竜が式神に追いかけられていく。" 千: ん?……あぁっ! 橋のとこで見た竜だ!こっちに来る! なんやろう、鳥やない!……ひゃっ! ハクーっ、しっかりーっ!こっちよーっ!!……ハク!? ハクーっ!! "部屋に竜が飛び込む。窓を閉めようとする千に、式神が飛びかかる。" 千: うわぁっ!わぁああーっ!!……あっ? ……ただの紙だ…… 千: ハクね、ハクでっしゃろ? ケガしてるの?あの紙の鳥は行ってしもたよ。もう大丈夫だよ。……わっ! 湯婆婆のとこへ行くんや。どうしよう、ハクが死んやう! "竜を追って走り出す千の肩に式神が張り付く。" 兄役 そーれっ、さーてはこの世に極まれる♪お大尽さまのおなりだよ♪そーれっ 皆: いらっしゃいませ!! 兄役 それおねだり♪あ、おねだり♪おねだり♪ "騒ぎの中をエレベータへ駆けていく千。" 蛙男 おっ…と。こら、何をする。 千: 上へ行くんや。 蛙男 駄目だ駄目や。……ん?あっ!血だ!! 千: あっ…… 兄役 どけどけ!お客さまのお通りだ! 千: あ、あのときはありがとうおまんねん。 兄役 何をしてる、早ぅど……うっ!? カオナシ: あ、あ、あ…… "千に両手いっぱいの金を差し出す。" カオナシ: え、え、…… 千: ……欲しくない。いりまへん! カオナシ: え、え…… 千: わい忙しいので、失礼しまんねん! "こぼした金に群がる群衆をすり抜けて千が出ていく。" 兄役 ええい、静まれ!静まらんか!!下がれ下がれ! これは、とんだご無礼を致したんや。なにぶん新米の人間の小娘でございまして…… カオナシ: ……おまえ、何故笑うわ。笑ったな。 兄役 ぇえっ、めっそうもない! 兄役・湯女: わっ、わっ、わああっ! "丸呑みにされる兄役と湯女。皆がパニックで散っていく。" "窓からパイプづたいにはしごへ行こうとする千。走り出すと、パイプが外れて崩れていく。" 千: わっ、わっ、わっ、わあっっ!! "かろうじてはしごに飛びつく千。はしごを登り出す。" 千: はぁっ、はぁっ……あっ!湯婆婆! うっ、くっ……くっ!くっ…あぁっ! "窓を押し開けようとする千。式神がカギを外して中に落ちる。坊の部屋へ。" 湯婆婆: まるっきしなんてことやろねぇ。 千: ! 湯婆婆: そいつの正体はカオナシだよ。そう、カ オ ナ シ! 欲にかられてとんでもない客を引き入れたもんだよ。あたしが行くまでよけいなことをすんやないよ! …あぁあ~、敷物を汚しちまって。おまえたち、ハクを片づけな! 千: はっ! 湯婆婆: もうその子は使いもんにならへんよ! 千: あっ……あ、あ、あ…… "クッションの中に隠れる千。湯婆婆が来てクッションを探る。" 湯婆婆: ばぁ~。 坊: んんーー、ああー……ああーー…… 湯婆婆: もぅ坊はまたベッドで寝ないで~。 坊: あ…あああーーーん、ああーん…… 湯婆婆: あぁああごめんごめん、ええ子でおねんねしてたのにねぇ。ばぁばはまだお仕事があるの。 (ブチュ) ええこでおねんねしててねぇ~。 千: ……あっ!…ぅう痛い離してっ!あっ、助けてくれてありがとう、わい急いで行かなくちゃならへんの、離してくれる? 坊: おまえ病気うつしにきたんだな。 千: えっ? 坊: おんもにはわるいばいきんしかおらへんんだぞ。 千: わい、人間よ。この世界やちーとばかし珍しいかもしれへんけど。 坊: おんもは体にわるいんだぞ。ここにいて坊とおあそびしろ。 千: あんはん病気なの? 坊: おんもにいくと病気になるからここにいるんや。 千: こないなとこにいた方が病気になるよ!……あのね、わいのどエライ大切な人が大けがしてるの。やからすぐいかなきゃならへんの。お願い、手を離して! 坊: いったりまへんちゃうぞ。坊がないたらすぐばぁばがきておまえなんかころしちゃうぞ。こないな手すぐおっちゃうぞ。 千: うぅ痛い痛い!……ね、あとで戻ってきて遊んであげるから。 坊: ダメ今あそぶの! 千: うぅっ……… 坊: ……あ? 千: 血!わかる?!血!! 坊: ……うわぁあーーああぁあぁあーーーー!!!! 千: あっ!ハクーーーー! 何すんの、あっち行って!しっしっ!ハク、ハクね!?しっかりして! 静かにして!ハク!?……あっ! "湯バードにたかられる千。その隙に頭たちがハクを落とそうとする。" 千: あっ、わっ……あっち行って! あっ!だめっ!! "部屋から坊が出てくる。" 坊: んんっ……んんんっ…… 血なんかへいきだぞ。あそばないとないちゃうぞ。 千: 待って、ね、ええ子やから! 坊: 坊とあそばないとないちゃうぞ……ぅええ~~…… 千: お願い、待って! 式神 ……うるさいねぇ。静かにしておくれ。 坊: ぇえ……? 式神 あんたはちーとばかし太り過ぎね。 "床から銭婆が現われる。" 銭婆: やっぱりちーとばかし透けるわねえ。 坊: ばぁば……? 銭婆: やれやれ。お母: はんとあたしの区別もつかないのかい。 "魔法でねずみにされる坊。" 銭婆: その方がちびっとは動きやすいやろ? さぁてと……おまえたちは何がええかな? "湯バードはハエドリに、頭は坊にされる。" 千: あっ…… 銭婆: ふふふふふふ、このことはナイショだよ。どなたはんかに喋るとおまえの口が裂けるからね。 千: あんはんはどなたはん? 銭婆: 湯婆婆の双子の姉さ。おまえはんのおかげでここを見物できて面白かったよ。さぁその竜を渡しな。 千: ハクをどうするの?ひどいケガなの。 銭婆: そいつは妹の手先のどろぼう竜だよ。わいの所から大事なハンコを盗みだした。 千: ハクがそないなことしっこない!優しい人だもん! 銭婆: 竜はみんな優しいよ…優しくて愚かや。魔法の力を手に入れようとして妹の弟子になるなんてね。 この若者は欲深な妹のええなりや。さぁ、そこをどきな。どのみちこの竜はもう助かりまへんよ。ハンコには守りの呪い(まじない)が掛けてあるからね、盗んだものは死ぬようにと…… 千: ……いや!だめ! "坊になりよった頭が坊ネズミとハエドリを虐めてんねん。" 銭婆: なんやろね、この連中は。これおやめ、部屋にお戻りな。 白竜 グゥ…! "隙をついて竜の尾が式神を引き裂く。" 銭婆: !……あぁら油断したねぇ~…… "反動で落ちる竜と千、坊ネズミ、ハエドリ。" 千: ハク、あ、きゃああーーーっ!! ハクーーーっ!! "落ちていく中で水の幻影が浮かぶ。" "力を振り絞って横穴に入る竜。換気扇を破ってボイラー室に出る。" 釜爺: なっ……わあっ!! 千: ハク! 釜爺: なにごとやい!ああっ、待ちなさい! 千: ハクっ!苦しいの!? 釜爺: こりゃあ、いかん! 千: ハクしっかり!どうしよう、ハクが死んやう! 釜爺: 体の中で何ぞが命を食い荒らしとる。 千: 体の中?! 釜爺: 強い魔法だ、わしにゃあどうにもならん…… 千: ハク、これ河の神様がくれたお団子。効くかもしれへん、食べて! ハク、口を開けて!ハクお願い、食べて!……ほら、平気だよ。 釜爺: そりゃあ、苦団子か? 千: あけてぇっ…ええ子やから……大丈夫。飲み込んで! 白竜 グォウッ、グオッ……! 釜爺: 出たっ、コイツだ! 千: あっ! ハンコ! 釜爺: 逃げた!あっちあっち、あっち! 千: あっ、あっ!あぁあああっ、ああああっ! (ベチャッ!) 釜爺: えーんがちょ、せい!えーんがちょ!! 切った! 千: おじはんこれ、湯婆婆のおねえはんのハンコなの! 釜爺: 銭婆の?…魔女の契約印か!そりゃあまた、えらいものを…… 千: ああっ、やっぱりハクだ!おじはん、ハクよ! 釜爺: おお……お…… 千: ハク!ハク、ハクーっ! おじはん、ハク息してへん! 釜爺: まだしとるがな。……魔法の傷は油断できんが。 釜爺: ……これでちびっとは落ち着くとええんやが…… ハクはな、千と同じように突然ここにやってきてな。魔法使いになりたいと言いおった。 ワシは反対したんだ、魔女の弟子なんぞろくな事がないってな。聞かないんだよ。もう帰るトコはないと、とうとう湯婆婆の弟子になっちまった。 そのうちどんどん顔色が悪くなるし、目つきばかりきつくなってな…… 千: 釜爺はん、わいこれ、湯婆婆のおねえはんに返してくる。 返して、謝って、ハクを助けてくれるよう頼んでみる。お姉はんのいるトコを教えて。 釜爺: 銭婆の所へか?あの魔女は怖えーぞ。 千: お願い。ハクはわいを助けてくれたの。 わい、ハクを助けたい。 釜爺: うーん……行くにはなぁ、行けるやろうが、帰りがなぁ……。待ちなさい。 たしか……どこに入れたか…… 千: みんな、わいの靴と服、お願いね。
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